今さら聞けない「遺伝子組み換え」ってなに?

パッケージに記載されている『遺伝子組み換えでない』の文字。
「大豆製品を購入するときは、その文言があるかどうか確認する」という方も少なくないのでは?

「遺伝子組み換え食品」が日本に登場したのは1996年のこと。当初は、「遺伝子組み換えによって作られた作物」を使っているのかどうか、商品の見た目だけでは分からない売り方がされていました。ですが、その表示が2001年に義務化。その際、遺伝子組み換えについてのさまざまなニュースを見聞きしましたよね。

私たちの食生活に深く関わっている遺伝子組み換え食品ですが、どんな技術なのか、どんなメリット・デメリットがあるのか……改めて聞かれると意外と知らないこともありそうです。

特に大豆は、遺伝子組み換えを行なっているものが多い作物のひとつ。
ぜひこの機会に「遺伝子組み換え」について一緒に学びましょう!

 

そもそも遺伝子組み換え食品ってどんなもの?

「遺伝子組み換え食品」とはそもそもどんなものなのでしょうか。

それは、文字通り「遺伝子を組み換える技術を使ってできた」作物や食品のことをいいます。

他の生物から有用な性質を持つ遺伝子を取り出し、それを部分的に組み込んで作られた作物や食品……。なんとなく難しい印象がありますが、「遺伝子の移植がなされている」というイメージが近いかもしれません。

もう少し詳しくお話しすると……。

私たち生物は皆、「DNA」という物質を持っており、らせん状の紐のように連なっています。そしてDNAには、遺伝情報を“もっている部分”と“持っていない部分”があり、遺伝情報をもっているDNAの一部のことを「遺伝子」と呼んでいます。遺伝子組み換え技術とは、まさにこの遺伝子を組み換えて品種改良を行う技術のことなのです。

遺伝子組み換えの仕組み図

「優れた品種を作りたい」という目的からいうと、品種改良と考え方は同じです。ですが、品種改良では、交配が同じ、または近い種同士で地道に掛け合わせを行っていくのが一般的です。(例:品種の違うイチゴ同士やロバと馬など)

それに対して、遺伝子組み換えは“全く違うもの同士の遺伝子”を組み込むことができるのが、決定的に違う点です。結果、自然では交配しない生物から遺伝子を意図的に持ってきて掛け合わせることができるため、これまでの品種改良では不可能とされていた特長を持つ農作物を生み出せるようになったのです。

 

どうして「遺伝子組み換え」をするの? メリットやデメリットは?

「遺伝子を組み換える」と聞くと、なんとなく不安な気がしてしまいますが、この技術を使うことで、さまざまな問題解決が期待されています。

そのひとつに、世界の食糧不足問題があります。
地道に交配を繰り返して改良していく従来の方法では、新しい品種を生み出すまでに長い時間がかかります。ですが、遺伝子組み換え技術であれば、新しい特性をもった作物を短期間で効率よく生み出すことができるのだそうです。

痩せた土地でもちゃんと育つ穀物、害虫に強いフルーツ、除草剤に負けない野菜など、「こういう品種があればもっと生産量が増えるのに」という問題を短時間でクリアできるというメリットがあり、食糧不足の解消や生産性の向上につながると言われています。

枯れた土地

デメリットとして挙げられるのが、健康と環境に対する影響への不安です。

たとえば、人間の手を介入して作られた遺伝子組み換え食品を食べると、アレルギーを引き起こすのではないか、人体に害を与えるのではないか、という不安を訴える人もいます。

厚生労働省によると、厳しい審査をパスし、安全性が確認された農作物や食品のみが市場で販売されるので、健康被害の可能性は極めて低い、と発表されています。(厚生労働省HP「遺伝子組換え食品Q&A」より)

また、環境に対する影響も心配の声があります。
遺伝子組み換えをした作物を育てると、もともとその環境の中にいた植物や動物に有害な影響を与えるのではないか?といった不安です。

こうした懸念は、この技術が登場した当初から現在まで根強く残っており、今でもさまざまな議論がなされています。そうした不安を取り除くために、安全性審査はすべて国が管理し、食品衛生法のもとシビアなチェック体制がしかれているそうです。

安全審査の流れ説明図

 

「遺伝子組み換え」の作物や食品は、私たちの食生活に深く関わっている

今では世界中で多くの遺伝子組み換え作物が誕生していますが、実は日本での商業的な遺伝子組み換え栽培は、研究機関などをのぞいてほぼ行われていません。ほとんどが輸入品というわけなんですね。

輸入許可されている遺伝子組換え食品の一覧

この図にあるように、日本で販売が許可されているのは8種類。そして、そのうち市場に出ているのは、大豆、とうもろこし、菜種、綿実の4種類です。

「それなら、あまり気にしなくていいかな?」と思ってしまいますが、例えば日本で流通している大豆の90%以上は輸入品。その輸入品の70%がアメリカからきていますが、アメリカの大豆は94%以上が遺伝子組み換え大豆。私たちは日頃から、意識しないうちに遺伝子組み換え大豆を食べているはずで、避けて通れないのが実情です。

さまざまな議論が続いている遺伝子組み換え食品ですが、このように私たちの生活にすでに深く関わっていることが分かります。

 

何を食べるか、を選べる時代。正しい知識をもって判断しよう。

今回は、遺伝子組み換えの作物や食品についての基本に触れてきましたが、良い面と不安な面、さまざまな側面があることを実感しますね。

少なくとも日本では、国が厳しい管理をしていること、そして国産であれば遺伝子組み換えのものがほぼないこと、原材料表示で確認できることが分かりました。それなら、「どういう基準で、何を食べるか」をしっかり自分たちの目で選んでいくことが、ますます大切になってくるのではないでしょうか。

皆さんもこの機会に、ぜひ考えてみてくださいね。

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参考:
遺伝子組み換え食品について(厚生労働省HP)
遺伝子組み換え食品Q&A(消費者庁HP)
遺伝子組み換え食品について(一般財団法人上越環境科学センターHP)
遺伝子組み換え作物の安全性(バイテク情報普及会HP)
塚本知玄監修/五日市哲雄、久保田博南著(2018)『おもしろサイエンス 大豆の科学』日刊工業新聞者.