魚介類のタンパク質の基本を知ろう! 魚類別のタンパク質量も紹介

世界的な健康志向の高まりの中で「魚って健康にいいね!」というイメージが広まっています。脂身がそれほど多くないうえ、お肉は生肉を食べる機会なんてそんなにありませんが魚は手軽に刺身やお寿司として食べられます。つまり新鮮ということとも健康的イメージを後押ししているのかも。美しい身体作りに欠かせない魚のタンパク質の秘密に迫ります。そもそもタンパク質がなぜ必要なのか、タンパク質の元となるアミノ酸にはどのような違いがあるのかを解説し、魚の種類ごとの特徴やタンパク質量を紹介しましょう。

魚介類から得られる主要な栄養素、タンパク質とは?

筋肉や臓器はもちろん、髪、肌、爪、ホルモン、酵素、免疫物質など身体の多くのパーツを担っているタンパク質は身体の約15〜20%を占めています。身体のおよそ60%が水分であることは良く知られていますが、その水分を除くと残りのおよそ半分がタンパク質でできている計算に!
そんな重要なタンパク質の基本のキを確認しましょう。

タンパク質を構成するアミノ酸

身体の多くを占める水分を除くと、多くのパーツをタンパク質が担っています。そのタンパク質は数多くのアミノ酸が結びつくことでできています。
人のタンパク質は、イソロイシン、ロイシン、バリン、ヒスチジン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、アスパラギン、アスパラギン酸、アラニン、アルギニン、システイン・シスチン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリン、チロシンという20種類のアミノ酸のさまざまな配列で構成されています。
このアミノ酸のどれかひとつでも欠けるとタンパク質にならない仕組みになっています。

食事から摂取しないといけない必須アミノ酸

タンパク質を作るのに欠かせない20種類のアミノ酸のうち、ヒトの身体自らで作ることできるのは11種類。残りの9種類(イソロイシン、ロイシン、バリン、ヒスチジン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン)は身体の中で作ることができず、栄養として食事から摂取しないといけないため「必須アミノ酸」と呼ばれています。
必須アミノ酸が多く含まれる食材は身体のタンパク質を作るのに欠かせないため良質なタンパク質といわれています。そのため食材のタンパク質にどれだけ必須アミノ酸が含まれているかということは重要なポイントです!
この必須アミノ酸が含まれているかを数値化したのが「アミノ酸スコア」です。満点が100で高ければ高いほど筋肉や肌、髪の毛を作るために欠かせないタンパク質がより効率的に体内で作られるようになります。

体のタンパク質は毎日作り替えられる

身体をカタチ作るさまざまな部位で使われるタンパク質は毎日作り替えられています。爪や髪が伸びるように合成と分解がくりかえされており、わかりやすく目で見えるだけでなく筋肉や臓器も古くなった部分は分解され身体の外へ排出されていきます。そして不足した分を、食事から得たタンパク質で補うのです。
成人で体重60㎏であれば1日180gが分解されるという報告があります。無くなった180gのうち100gは身体の中に貯蔵されるアミノ酸プールから利用されますが、80gは食事から取り入れなければならないという計算になります。

身体の変化だけでなく集中力が切れやすくなる

60㎏の成人で一日80gを外部から取り入れなければならないタンパク質ですが、具体的にタンパク質が不足するとどようなことが起こるのでしょうか。
まず、筋肉量が減少します。臓器も筋肉でできていることから、体調不良を引き起こす原因にもなり、肌や髪のトラブルの元にもつながります。やる気を出すドーパミンやリラックスさせるセロトニンなどの神経伝達物質もタンパク質のアミノ酸でできているため、集中力や思考力を低下させる原因の一端にもなってしまいます。

 

魚介類のタンパク質の特長は?

魚のタンパク質にはどのような特徴があるのでしょうか。アミノ酸スコアはどうなっているのか、白身魚、赤身魚などの種類による違いについて確認しましょう。

アミノ酸スコア100の良質な魚介類のタンパク質

アミノ酸スコアの高い良質なタンパク質を摂取することは健やかな体調維持には欠かせません。魚介類には肉類と同様にアミノ酸スコアが100の良質なタンパク質をもつ種類が多数あります。
肉類と比較してすじの部分となる基質タンパク質が少ないのも特徴。そのため柔らかく刺身でも美味しく食べることができます。

白身魚は速筋

魚には大きく白身魚と赤身魚に分類されますが、白身魚の特徴は瞬発力の源となる「速筋」が多く含まれること。筋肉は速筋と遅筋の2種類があり、速筋に多く含まれるタンパク質は「速筋タンパク質」と呼ばれています。速筋タンパク質は、白身魚のようにいつもは海底などにいて必要な時に瞬発的に動く魚に多く見られます。
速筋のおもな役割には、ダッシュ、ジャンプといった素早い動きを支えたり、基礎代謝の向上をしたりなどがあります。

赤身魚は遅筋

赤身魚は回遊魚に多く、泳ぎ続けていることから持久力がある種類の魚です。長距離を効率的に動くために「遅筋タンパク質」を多く含むことが特徴。
遅筋は持久力をより必要とする有酸素運動に効果的で、姿勢の維持やバランス感覚を高める役割も担っています。

 

魚介類ごとの特長

魚の良質なタンパク質を積極的に摂ることは、健康的な身体作りに欠かせません。特に肉類と比較すると脂質が少なく、生でも食べやすいのでよりダイレクトに栄養を補給できることが特徴です。魚の種類によって、どのようにタンパク質やエネルギー、脂質が違うのかを確認しましょう。数値はすべて100g中の成分です。

データ出典:『食品成分データベース』文部科学省

白身魚:サケ

タンパク質21.7g/エネルギー139kcal/脂質6.6g
アスタキサンチンと呼ばれる色素から赤身魚と思われがちですが、白身魚に属するサケ。ビタミンB群を多く含みエネルギー生産栄養素を効果的に利用できる特徴があります。

白身魚:タラ

タンパク質17.4g/エネルギー72kcal/脂質1g
タンパク質の量が豊富でありながら、脂質が非常にすくなく低カロリーです。

白身魚:タイ

タンパク質20.6g/エネルギー129kcal/脂質5.8g
うま味成分であるグルタミン酸やイノシン酸を多く含み、タウリンが豊富な白身魚です。

赤身魚:アジ

タンパク質19.7g/エネルギー112kcal/脂質4.5g
高脂肪でうま味が強いアジ。脂肪は多価不飽和脂肪酸を多く含む良質な脂としてよく知られ、魚類には珍しくカルシウムの量も豊富な赤身魚です。

赤身魚:サバ(まさば)

タンパク質20.6g/エネルギー211kcal/脂質16.8g
高タンパクで高脂質の代表的な赤身魚、サバ。種類によってエネルギーと脂質に大きな違いがあり、お弁当や惣菜でよく使われる大西洋サバではより脂質が多くなります。

赤身魚:マグロ

赤身:タンパク質26.4g/エネルギー115kcal/脂質1.4g
トロ:タンパク質20.1g/エネルギー308kcal/脂質27.5g
高タンパクで低脂肪の代表格、マグロは部位によって栄養素量が異なります。トロは広く人気のある部位ですが、エネルギーと脂質を抑えたい場合は赤身を選びましょう。

エビ・タコ・イカ

エビ:タンパク質18.4g/エネルギー77kcal/脂質0.3g
タコ:タンパク質16.4g/エネルギー70kcal/脂質0.7g
イカ:タンパク質17.9g/エネルギー76kcal/脂質0.8g
エビ、タコ、イカの特徴は白身魚よりも低脂肪でありながらタンパク質量が多く、特にタコやイカはアミノ酸のタウリンが豊かです。

アサリ

タンパク質6.0g/エネルギー27kcal/脂質0.3g
貝類はほかの魚介類と比較するとあまりタンパク質の量は多くありません。あさりに含まれるヘム鉄などの微量栄養素を取り入れるためと考えた方が良いでしょう。

加工品:ツナ缶

水煮:タンパク質16g/エネルギー70kcal/脂質0.7g
油漬:タンパク質17.7g/エネルギー265kcal/脂質21.7g
ツナ缶は手軽に入手できる万能食ですが、水煮缶と油漬缶で栄養素が大きく変わります。エネルギーと脂質を抑えたいときは水煮缶を選びましょう。

加工品:魚肉ソーセージ

タンパク質11.5g/エネルギー158kcal/脂質7.2g
手軽に食べられる、子供から大人まで人気の魚肉ソーセージ。加工の段階で豚油を加えられるため脂質と食塩が多いので注意しましょう。

 

魚介類のタンパク質で健康的な体づくりを

食事とタンパク質

魚介類の栄養素は、良質なタンパク質を持つことで知られる肉類と比較しても、負けず劣らずのタンパク質の豊富さをほこりながら、低脂質&低エネルギーで身体のラインが気になる人にとって欠かせない存在。
種類も豊富で、生で摂ることでダイレクトに栄養を取り入れることもできます。魚介類の種類によってタンパク質の量やそのほかの栄養素に違いがあるので、特徴をおさえて健康的な体づくりをしましょう。

 

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参考:

タンパク質とは【タンパク質の種類、機能、働きなどを解説】|かんたん、わかる! プロテインの教科書

魚介類(鮭,マグロ,ツナ缶など)のタンパク質について解説!含む量や調理法などを紹介|かんたん、わかる! プロテインの教科書

アミノ酸の基礎知識|協和発酵バイオ

アミノ酸(あみのさん)|e-ヘルスネット

第8回:魚介類について学びます(魚介類博士になる!)|愛知県共済

速筋タンパク質 タンパク質も選ぶ時代へ|ニッスイ

日本水産、スケソウダラタンパク質研究会での5件の研究成果を日本アミノ酸学会で発表|日本経済新聞